生きるアート

生きるアート 折元立身展

川崎市民ミュージアムで行われていた「生きるアート 折元立身展」に行ってきました。

折元立身さんは、パフォーマンス・アーティストとして、現代美術の前線で、40年以上に渡り、国際的な活動を繰り広げてきました。その作品はどれも、人を驚かせるユニークな発想に満ちていました。

作品の中で最も私の心を鷲づかみしたのは、会場の冒頭に展示されていた母親を抱きしめる写真でした。

生きるアート 折元立身展

目をつむる母とカメラ目線でこちらを見つめる眼差しには、私が普段撮っている母と幼い子の”関係が逆転した”とははまた別のものでした。

ましてや”老いた母への息子の愛”などと簡単には言えるものではありませんでした。きっとそれは”愛”なのだと思うのですが、言葉にしてしまうと陳腐なものになってしまう気がします。

そもそも母から子へ無償の愛を捧げることができると思うのですが、息子から母への無償の愛は、残念ながら存在しない気がします。介護しているならば尚更のこと。日々葛藤の中で、老いていく母をただただ純粋に愛することなんてきっとできないと思うのです。

折元さんの母は、幼い頃からずっと彼のことを応援してくれていましたそうです。とても貧乏だったそうですが、世の中はお金だけでなく、文化も大事だということを、ちゃんとわかっていたといいます。

アルツハイマーになって、母を題材にした作品を作る時も、嫌な顔をしたり、文句をいうことはなかったのだとか。むしろ「私は世界で有名になった」と息子の成功を自分のことのように喜んでいるそうです。

とはいえ、アルツハイマーの人をアートの題材にすることには、少なからず批判もあったかと思います。折元さん自身にも、葛藤があったようです。しかし今は「アートをやめたら自分も不幸になるけど、自分が不幸になると母も不幸になる」という想いで一緒に作品を作っているそうです。

私が息子に対して抱く思いは、(いまのところ)ただ一つ。世界のどこで、どんな環境にいても、「人生って楽しい」そう思って毎日を生きてほしいということ。余計なことを求めず、シンプルにその想いだけを持つ強さをみた気がします。

うまく言えませんが、意志ある二人の強烈なの想いがビンビンと伝わってきて、涙がこぼれおち、息子を抱きしめながら、しばらくその場からうごくことができなかったほどでした。

一枚のポートレートには、人の一生分の想いが写しだされる、改めて感じました。綺麗ごとの写真でない生なましい写真が撮りたい!とても清々しい気持ちで会場をあとにしました。